虹の都へ
震える声で、虹のお父さんが言った。

「その当時は仕事が軌道に乗り始めて、忙しい毎日だった。

その日々の中で、可南子さんは、つらかった。

2人の子供――ましてやそのうちの1人は、他人の子供。

疲れのあまり、彼女は少しずつやつれて行くようになった。

そして、虹に手をあげるようになった」

肩が震えていた。

畳のうえに、小さなシミができる。

「虹に手をあげる彼女と大声で泣きわめく虹。

どっちもかわいそうで、仕方がなかった」

震える声で、虹のお父さんが言った。
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