虹の都へ
そう言って、虹は微笑んだ。

「けどさ」

あたしは言った。

「あたし、お父さんがいないからわからないんだけど…」

「片親なのか?」

虹が聞いてきた。

「うん。

いわゆる、母子家庭。

お父さんはあたしが生まれる前に死んだんだって」

「一緒だな」

虹が言った。

一緒?

首を傾げるあたしに、
「俺は、母親がいないんだ。

俺が小さい頃に、離婚した」
と、虹が言った。

「…そうなんだ」

虹も、片親の家庭で育ってきたんだな。

ほんの些細(ササイ)なことなのに、何故だかあたしは共感を感じてしまった。
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