虹の都へ
「部屋?」

「ベランダの右の部屋と左の部屋、どっちがいいかって」

「あー、それね」

あたしは向かいあわせになっているドアを交互に見た。

「間取りは、一緒なんでしょ?」

「そりゃな」

あたしはドアを見ながら、考える。

ベランダだし、間取りは一緒だし。

「じゃあ、左の部屋にする」

左のドアを指差すと、あたしは言った。

「ん、わかった」

あたしは、ふと思った。

「あのさ」

「何?」

「同居すること、お父さんは知ってるの?」

あたしの質問に虹は、
「何だそれか」
と、言った。
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