虹の都へ
ちょっとドキッと、あたしの心臓が鳴った。

って、あたしは変態か!

何その気になっちゃってんのよ!

心の中で自分を叱責しながら片づけてた時、テーブルの隅に何かが置いてあることに気づいた。

手のひらサイズの小さくて薄い入れ物だった。

…何だろ、手鏡かな?

ふたを開けると、名刺だった。

あ、この入れ物“名刺入れ”ってヤツか。

「――森藤、勇…?」

字の雰囲気からして見れば、森藤勇(モリフジイサミ)と読むのだろう。

あの人の名前だろうか?

「すみませーん」

「あ、はーい」

呼ばれて、あたしは我に返った。

もう、何してんのよ!
< 43 / 295 >

この作品をシェア

pagetop