虹の都へ
何て思いながら、あたしは彼を見つめていた。

「あの、名刺入れ…」

見つめていたら、森藤さんが言った。

「…えっ?

ああ」

見つめていたから、すっかり忘れていた。

「これですか?」

手に持っていた名刺入れを、森藤さんの前に差し出した。

「ありがとう」

森藤さんは差し出した名刺入れを受け取ると、スーツのポケットに入れた。

「あの…大丈夫、でしたか?」

あたしは聞いた。

「何が?」

森藤さんは首を傾げ、聞き返した。

美人な人って、何させても美人だ…。
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