虹の都へ
「おはよう」

あたしはあいさつを返すと、朝食の用意がしてあるテーブルの椅子に腰を下ろした。

「今日は仕事休みなの?」

そう聞いたあたしに、
「仕事は午後から」

お母さんが答えた。

「そう」

「それよりも、物件は見つかった?」

お母さんが聞いてきた。

「まあ、一応は」

「そう」

お母さんは微笑むと、また掃除機をかけ始めた。

そんなお母さんの様子を見ながら、あたしは思った。

本当は、寂しいんじゃないだろうか。

あたしの家は、お母さんと2人暮らし。

いわゆる、母子家庭だ。

お父さんは、あたしが生まれる前に死んだ。
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