虹の都へ
“物体”――正確には、ベロベロに酔いつぶれた女の人だ。

酒の匂いと香水の匂いがキツ過ぎて、頭が痛くなる。

バッチリと整った化粧は崩れていて、お目汚しどころの問題じゃない。

高そうなスーツはシワだらけで、シャツは胸のところが大きくはだけている。

正直言って、目のやり場に困る…。

茶色のキレイな髪もボサボサで……一体どうしたんだろ?

「瑞希」

虹が呼んだ。

「彼女を俺の部屋まで運ぶの手伝ってくれるか?」

「ああ、うん」

彼女を虹の部屋のベッドに運び終えると、あたしたちはリビングに行った。

虹はめんどくさそうにソファーに腰を下ろすと、ネクタイをゆるめた。
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