虹の都へ
お母さんは、女手一つであたしを育ててきた。

朝早くから夜遅くまで働きづめ。

弱音を吐いているところなんか、今まで見たことがない。

そんなお母さんのおかげもあって、あたしは無事に高校を卒業して、大学に入ることができた。

あたしが大学に合格した時、お母さんはまるで自分のことのように喜んだ。

でも嬉しい反面、あたしと離れて暮らすことが寂しいんだと思った。

いつも笑っていても、やっぱり寂しいんだと思う。

ずーっと2人で暮らしてきたから。

今さらになって、あたしはわざわざ遠くの大学を受験する必要なんてなかったんじゃないかと思った。

って言っても、実家から近い大学なんてない。

就職するにも、この不景気。

朝食を食べながら、あたしは気づかれないように息を吐いた。
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