虹の都へ
喉元まで言葉が出かかっているけど、何も言えない。

でも…言ってしまったら、何になるとでも言うのだろうか?

虹が誰かに恋していようとも、あたしは関係ない。

あたしは、虹のルームメイトだもん。

もう少し言うならば、他人。

「瑞希?」

呼ばれて我に返る。

「えっと、お風呂の用意してくる」

虹から離れたくて、あたしはリビングを飛び出した。

それから逃げ込むように、バスルームへ行く。

「――ッ…」

胸がモヤモヤする。

これは一体、何なのだろう?

何で胸がモヤモヤするのだろう?

「何だって、言うのよ…」

あたしの呟きは、バスルームの中で消えた。
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