虹の都へ
虹の部屋のドアが開いた。

あたしは、持っているフライパンを落としそうになった。

出てきたのは、瀬名さん。

昨日のヨレヨレな姿なのは、目をつぶっておく。

でも…胸の中がチクッと痛んだ。

モヤモヤしたり、チクッとなったり…忙しいな。

「あら」

瀬名さんがあたしの姿に気づいて、やってきた。

あたしは逃げ場をなくしたと言うように、その場を動けない。

瀬名さんは椅子に腰を下ろした。

「――おはよう、ございます」

何か言わなくちゃと思って出てきた言葉は、これだった。
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