【中編】まさかの恋
トクントクン……って、いつもと違う胸の鼓動を気にしながら着替え終えると、俺は自分から重い沈黙を破る。
「……帰るか」
「へ!?」
突然俺が口を開いたからだろうか……。
真姫は目を丸くして肩をビクッと震わせた。
そして俺を睨む。
「どうした?」
キョトンとしながら首を傾げると、俺を睨んだまま口を開く。
「急に……しゃべるから」
そう言って真姫は俯いた。
夕日でオレンジ色に染まった真姫は、なんとなく顔が赤くなっていた気がした。
それを見て俺はフイッと視線を逸らすと、歩き出しながら真姫に言った。
「ほら。行くぞ」
その声に慌てて着いてくる真姫。
俺はちょこちょこと歩いている真姫を見て、顔が熱くなった。
……何だこいつ。
可愛い。
そう思っても、恥ずかしくて口が裂けても言えない。
ガラじゃねぇし!!
そう思いながら俺は昇降口を出ると、真姫を見下ろした。