トランプ帝国記
ト、腰に険が備えてある。


(―――腰に険!?!?)


バッと上半身だけ反応して飛び起きる。


それに気付いた女の人が近寄って来る。


(やっぱり死んだんだ!それか夢!夢!)


その人は横に来るとゆっくりかがんで、れんげの頭に優しく手を置いた。


すごくたくましい目をしている。


でも全く怖さを感じない。


「良かった、起きて。平気?」


「……」


「言葉通じるよね?…ったく、フェイが何も言わずに連れて来るからびっくりしてるじゃないっ」


「ほんと、悪かったな急に。」


図書室で見た人がそう言いながら近くまで来る。


れんげはポカ~ンと口を半開きにしたまま、その人の顔を見た。


「とりあえず、死んでねぇから」


一番遠くでかべに寄りかかっている男の人が面倒くさそうに言う。


すると近いほうが付け足した。


「それに夢でもない。どっか打ってないよな?」

「……」


首を縦にゆっくり下ろす。


「…まだ混乱してると思うけど、徐々に話すよ。この《トランプ帝国》のこと」


「トラ…」


(あの本の題名。ってことは、ここは本の中ってこと?)


頭の中にマーブルの液を落とされ
< 10 / 51 >

この作品をシェア

pagetop