トランプ帝国記
「…面倒くせぇ。」


キアーも嫌々承知した。


フェイは最後にれんげに視線を送った。


「…っ?」


れんげはフェイと目があって、何を求められているかわからず動揺する。


「方向は決まった。さて、どうする?


そう言われても、なぜ聞くのかわからない。



「危険な旅路になる。


着いてきてくれるか…?」


「…え?」


それからフェイは黙ったまま、れんげから出てくる答えを待っていた。


リアとキアーはフェイの妙な様子に怪訝な顔をしながら、無言で見ていた。


重苦しい雰囲気にれんげは息がつまりそうになり、言葉が出なかった。


「私は…皆さんのお邪魔にならなければどちらでも…」


曖昧な答えに、フェイは苦々しく笑った。


「ただ自分がどうしたいのかを言ってくれ」


優しく放つフェイの言葉に、れんげは更に戸惑った。





今まで自分で何かを選択することがあまりなかった―――。


差し出された左右の手の飴を選ぶとき、りんごにするか桃にするか、そんな選択は許された。


だが右を行くか左を行くか、道をえらぶ選択肢など与えられたことがなかった。
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