トランプ帝国記
「この帝国ができたときから、Jだけに伝わる書物があります。


それぞれの国に一冊。


そこには、今までの国の歴史が先代によって残されています。


700年ある平和な歴史の中で、帝国が他国を吸収したこともありました。


戦いに勝つことで、力づくで土地を手に入れようと。


その中でも、ただ一度だけ、平和に解決できる方法を取ったときがありました。


帝王にも屈しなかった、勇敢なあるJによって。


その男は、ジェイムズ・M・ドットソン――…。


フェイの祖父です。」


全員の目がフェイに向けられる。


フェイは黙ってクロードだけをまっすぐ見た。


れんげは横顔を見て、フェイをさっきよりも輝かしく思えた。


「ジェイムズは互いの利益よりも、犠牲者を最小限にする方法を取ったんです。」


一度フェイに向けた視線をまた遠くに移し、窓辺から少しずつ離れる。


フェイは何か言いたげな目でクロードを追った。


リアもれんげも、途中で切れた話の続きを待った。


「…はぁ。何だ?その方法って」


もったいぶるような言い方に、キアーも面倒くさそうに聞く。
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