トランプ帝国記
この頃、ダイヤ国内で窃盗団の存在が噂になっていた。


“ストライド”という集団だ。


ストライドは、ダイヤ国の貴族の豪邸に忍び込んでは、金目の物を盗み出していた。


盗まれた物の行方はわかっていない。


きっとどこかで売り飛ばし、団員で山分けしているのだろうと、町の人々は言っていた。




リアは足も早く、瞬発力も並外れていた。


もちろんそれだけで簡単に泥棒なんてできるわけはない。


でもリアは一人、それだけを頼りにストライドに入団した。





ストライドはもともと集団で行動しない連中だった。


2、3人のチームで行動していた。


メンバーは10人。


どれも盗みのエキスパートだ。


それぞれは普段、普通の住民として普通の生活をしている。


団員の本名、職業、住んでいる場所などは全員一切知らない。


ただ、誰がいつどこに盗みに出るか、それくらいしかメンバーに関知しない。


誰かが足を引っ張れば、そのまま消される冷血な連中だ。


それを知っていても、リアは行動せずにはいられなかった。


もう、あんな姿はみたくない―――。
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