君と僕の物語
10月31日がきた。

私にとって大切なライブでもあり、大切な日。
いろんな意味でドキドキしながら、会場に向かった。


電車の中、健吾からのメール。

「がんばれ。沙希ちゃんは、いっつも輝いてます。
たくさんの人に沙希ちゃんの歌声を届けてください。」


よし。できる。


ドラムのカウントから幕があく。
そう。この場所。
私が一番好きな場所。


「この日のためにつくった新曲をきいてください。」

『答え』

とりだした日記帳。
書きたいことはたくさんあるのに、
残したくない印ばかり。
ここに書いたら、思い出になって残ってしまう。
だから、とじることにしたんだ。

自分を操れる自分がいればいいのに
否定する私。肯定する私。
どっちつかずで、いつまで経っても変われない。

上書きした記憶 振り返らないと決めたんだ。
削除したメール 今の私には必要ないもの。
delete ボタン1つで消える文字に思いをこめた
ちゃんと届いたのか不安なのに
確かめる方法が見つからない。


おしつけたやさしさ。
誰のためでもなく自分のために
やさしいコトバを選んだ。
ここで泣いたら、今までの自分を否定してしまう。
笑っていることにしたんだ。

心を操れる頭があればいいのに。
なげだした私。なさけない私。
なんとかなるって、いつまで経っても変わらない。

「あの時もっと・・」過去を変える勇気もないのに。
投げかけた問い ・・・どうして?
正解を導き出すための方法が見つからない。
文法でも、数式でも解けないことに
戸惑いながら・・・それでも答えを探してる。


あっという間の時間。
たくさんの拍手が頭にひびいていた。
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