【短編】ハチミツ王子
次の日。
あたしはまた学校へ向かった。
昨日はまったく眠れなかった。
だって……。ずっと考えてたから。
校門を通って、校舎に入る……と。
あ……。
昇降口の靴箱に寄りかかって俯いているミツの姿。
その姿を見て、あたしは思わず歩いていた足を止めた。
すると、ミツはあたしに気付いてフッと笑った。
そしてあたしの方に歩み寄ってくる。
「おはようございます。羽菜先輩」
「あ。おはよう」
正直、気まずかったけどあたしは笑って返事した。
するとミツは眉を下げてあたしを見上げた。
「先輩……ちょっといいですか?」
そう言われて、あたしは断る事ができなかった。
ミツに着いて行くと、立ち止まったのは体育館。
靴を脱いで中へ入っていくミツに、あたしは慌てて着いて行く。
何か……。いつもは部員とか、他の部活の人がいるけど。
誰もいないとすっごい広く感じるな。
そんな事思いながら体育館を見ていると、ミツはあたしの方を見た。
そして口を開く。
「昨日も言いましたけど。俺、本気ですから」