【短編】ハチミツ王子



次の日。

あたしはまた学校へ向かった。

昨日はまったく眠れなかった。

だって……。ずっと考えてたから。

校門を通って、校舎に入る……と。



あ……。


昇降口の靴箱に寄りかかって俯いているミツの姿。

その姿を見て、あたしは思わず歩いていた足を止めた。

すると、ミツはあたしに気付いてフッと笑った。

そしてあたしの方に歩み寄ってくる。



「おはようございます。羽菜先輩」



「あ。おはよう」



正直、気まずかったけどあたしは笑って返事した。

するとミツは眉を下げてあたしを見上げた。



「先輩……ちょっといいですか?」



そう言われて、あたしは断る事ができなかった。



ミツに着いて行くと、立ち止まったのは体育館。

靴を脱いで中へ入っていくミツに、あたしは慌てて着いて行く。



何か……。いつもは部員とか、他の部活の人がいるけど。

誰もいないとすっごい広く感じるな。



そんな事思いながら体育館を見ていると、ミツはあたしの方を見た。

そして口を開く。



「昨日も言いましたけど。俺、本気ですから」




< 10 / 28 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop