【短編】ハチミツ王子
本気。なんだ。
ミツのいつもとは違う真剣な表情を見て、嫌でも伝わってきた。
「あのさ……。どうしてあたしだったの?」
「え?」
そう聞いてみると、ミツは首を傾げた。
「だってさ。あたしミツより背高いし。全然女の子じゃないし」
ミツにはきっと……もっと背が低くて可愛らしい女の子が似合う筈。
なのに、今まで全くと言っていいほど。
恋の噂を聞かなかったミツが選んだ相手があたしなんだろう。
するとミツはニコッと笑った。
「そんなの。好きになるのに理由がいりますか?」
「へ?」
「好きになるのに。俺は理由なんていらないと思います」
理由……。
そう言って微笑むミツを見て、あたしは何も言えなかった。
ただ、ミツの言葉が胸に響いた。
考え込んでいると、ミツはフッと笑って口を開いた。
「俺。先輩が気持ちの整理つくの待ってます。もしOKだとしても。駄目だとしても。待ってますから」