【短編】ハチミツ王子



本気。なんだ。



ミツのいつもとは違う真剣な表情を見て、嫌でも伝わってきた。



「あのさ……。どうしてあたしだったの?」



「え?」



そう聞いてみると、ミツは首を傾げた。



「だってさ。あたしミツより背高いし。全然女の子じゃないし」



ミツにはきっと……もっと背が低くて可愛らしい女の子が似合う筈。

なのに、今まで全くと言っていいほど。

恋の噂を聞かなかったミツが選んだ相手があたしなんだろう。



するとミツはニコッと笑った。



「そんなの。好きになるのに理由がいりますか?」



「へ?」



「好きになるのに。俺は理由なんていらないと思います」



理由……。



そう言って微笑むミツを見て、あたしは何も言えなかった。

ただ、ミツの言葉が胸に響いた。



考え込んでいると、ミツはフッと笑って口を開いた。



「俺。先輩が気持ちの整理つくの待ってます。もしOKだとしても。駄目だとしても。待ってますから」




< 11 / 28 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop