【短編】ハチミツ王子
校門を出ようとした時。
校門の前に人の影が見えた。
……誰?
そう思ったのと同時に、すぐ誰だか分かった。
ミツが……あたしに気付いてこっちを向いたから。
「羽菜先輩!」
「あ……ミツ」
するとミツは可愛らしい笑顔であたしの方に走ってきた。
「先輩♪一緒に帰りましょ」
そう言われてあたしは、戸惑いながら頷いた。
「うん……」
駅へ向かう約10分間。
ミツは笑顔で話し続ける。
「―――……なんですよ。先輩どう思います?」
なんてニコニコしながらあたしに聞いてくる。
あたしはほとんど会話が入ってこなくて、“そうだね”ばっかり。
だってこれが精一杯なんだもん。今のあたしには。
するとミツはいきなり静かになって、立ち止まった。
それに気付いたあたしは振り返って首を傾げた。
「どうしたの?ミツ」
あれ?あたしが曖昧な返事しかしないから、怒った?