【短編】ハチミツ王子



すると少し間を空けて、ミツは顔を上げて照れた様子で言った。



「先輩……手、繋ぎません?」



「へ!?」



手?



ミツを目を見開いて見ると、ミツはそっとあたしの手を握った。

そして握った手を上げて、“えへへ”って可愛く笑った。



「もう……」



暗闇の中であたしは呆れたようにそう言った。

でも、心臓はバクバクだった。

だって……ただ女の子みたいで可愛いって思ってたミツの手が。

骨っぽくて大きくて……男なんだなって思っちゃったから。

ねぇ、ミツ。

どうしてあたしなの?

ねぇ、何で?

何であたしはこの手を―――……。

離したくなって思ってしまうんだろう。




駅に着いて、ミツはあたしに向き合って繋いでいる手を見下ろした。

そして名残惜しそうに、手を放した。



あ……。

ふいに離れた手が寂しかった。



「じゃぁ先輩」



「あ、うん。バイバイ」




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