【短編】ハチミツ王子
あたしはわざと笑顔を作って明るい顔で言った。
「あぁ。そんな事あったね」
そう言って笑うと、上田はフッと笑いながらあたしの腕を掴んだ。
「お前綺麗になったなぁ。俺さ今フリーなんだわ。まだおれの事好きだったら付き合ってもいいぜ?」
「え……」
「何か今日石原の事見て、いいかなぁって思った」
そう言って上田は笑った。
何こいつ……。
こんな軽い奴だったなんて……。
そうムッとした時だった。
上田に掴まれている腕が誰かに掴まれた。
「え?」
横から伸びてきた手を辿っていくと、眉間に皺を寄せて不機嫌そうなミツが立っていた。
「あ?誰こいつ」
腕を掴まれた上田はミツを見下ろす。
するとミツは今まで聞いた事がない低くて威圧的な声で言った。
「悪いけど……羽菜先輩に触んないで」
すると上田は鼻で笑いながらあたしの顔を見た。