【短編】ハチミツ王子
ドキ……。
心臓が跳ねた。
すると、上田は鼻で笑った。
「何か痛い奴だな」
そう言った瞬間。
「いててててて!!」
ミツに腕を掴まれていた上田が痛がり出した。
え?
キョトンとしていると、ミツは怒りに満ちた声で呟いた。
「そんな考え方しかできないお前の方が痛いし。恥ずかしいと俺は思うな?」
顔はいつもの可愛い笑顔だけど、声と威圧感が尋常じゃなかった。
「いてぇって!放せよ!」
やっとの思いでミツの腕を振り払うと、上田はあたし達を睨んで去って行った。
するとミツはあたしの方に振り返った。
……こんな馬鹿にされて、あたし……。
恥ずかしい!
あたしはミツに背を向けて走り出した。
「待って!先輩!」
咄嗟にミツに腕を掴まれてあたしはその場に立ち止まる。
「ミツ放して……」