【短編】ハチミツ王子
震える声で頼む。
「嫌です」
「お願い……放して」
必死で涙を堪える。
ここで泣いちゃ駄目。
ここで泣いちゃ駄目なんだ……。
するとギュッとあたしの腕を掴んでミツは口を開く。
「絶対に放しません」
「何でよ!?」
ついに涙を堪えられなくなったあたしの目から涙が溢れる。
そう怒鳴ると、ミツはあたしの腕を引っ張って抱きしめた。
あたしは慌てて離れようとする。
「お願いだから放してよ!」
必死で抵抗すると、ミツはあたしの頭を自分の胸に寄せて掠れた声で耳元で呟いた。
「放したら……先輩逃げるじゃないですか」
そう言ってあたしの腰を引き寄せて、ギュッと抱きしめた。
「逃げたら……1人で泣くじゃないですか」
するとミツはさらにギュッと抱きしめた。
あたしは強くあたしを抱きしめるミツに泣きながら言った。
「ミツにはもっといい子がいるよ!」
「何でそう思うんですか?」