私の好きな彼女、私を愛した彼氏
今の私は有り得ない程冷静かつ沈着だった。

…通算成績0勝11敗で迎えた12戦目の合コン。
正直言って危機迫る勢いだった。
いつもの3倍の時間をかけてメイクを施し勝負下着だってわざわざ新品を買いに行ったんだから。

今日こそはお持ち帰りされてみせる!!と気合いを入れたにも関わらず、気がつけば私は1人取り残されていた。

………さすがに凹んだ。

お酒の力も借りてひたすら笑顔で幹事役を勤めていたけど心の中では号泣です。





……そんな時だった。


『悪ぃ、遅れた。』

背後から聞こえてきた少し高めのアルトボイス。
それは【空気読めよ!】と叫びたくなるくらいに明るい口調だった。
そんな声の主とは裏腹に私の気分は最低。
苛立ちと腹立たしさの余り文句の1つでも言ってやろうと振り向こうとしたが…。
今にも泣き出しそうな情けない顔を見られるのは癪だ。

私は俯いて小刻みに震えながら溢れそうになる涙を必死で堪えていた。


でも………。



『何だよ。マジに遅ぇよ、ハル。』



――ハ…ル…?――



その後のことは良く覚えていない。
ただ、私の隣に腰を下ろした彼の笑顔が心に焼き付いて――。




……今に至るわけです。
記憶がある以上同意の上での行為になるんだけど……。
複雑な気分だった。
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