私の好きな彼女、私を愛した彼氏
｢折角だし、食べていきなよ。｣

そこには満面の笑みを浮かべたアカネの姿があった。
先ほどの動揺なんて嘘みたい……。


｢ぁ、アキ、うちのお母さんの作った肉じゃが美味しいって言ってたよね？」
｢ぇ…あ、うん。｣
｢あら、そうなの?だったら今日の夕飯は肉じゃがに決定ね。腕によりをかけて作るから期待しててね、アキちゃん!｣


…コレハ…ナニ?…


私は意識だけが取り残された只の人形のように微笑み夕食を共にした。
正直…何を話し、何を口にしたのか良く覚えていない。
だけど、終始笑顔を絶やさず…アカネの親友としての私を必死に保っていた事だけは鮮明に記憶していた。


｢今日はご馳走さまでした。凄く美味しかったです。…あの…、今更言うのも何ですがご迷惑じゃなかったですか?｣
｢いいえ、娘がもう一人増えたみたいで凄く楽しかったわ。こんなに賑やかな食事は久しぶりよ。ありがとう。｣
｢…いえ。お礼なんて……。｣


――やめて…下さい――。

喉元まで出かかった言葉を私は最後の気力を振り絞り飲み込んだ。
口にしてしまえば自分の中にある罪悪感に負けてしまう気がしたから…。


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表紙・目次

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