私の好きな彼女、私を愛した彼氏
アカネの家は母子家庭でお母さんの仕事は化粧品の営業。
不規則な勤務時間に休日が潰れる事は当たり前。
帰宅が夜中になったりとアカネは一人の時間を過ごすことが多かったらしい。

それでも笑顔を絶やさずアカネを慈しむお母さんをアカネは誰よりも愛していた。


「遠慮しないでまたいらっしゃいね。」
「…はい。」


私達の関係がバレた時、この笑顔は失われてしまう…。
胸が痛い…。



でも譲れない。
それでも私はハルと生きる道を選ぶ。
きっとハルも同じ気持ちでいてくれてるはずだ。

「それじゃ、失礼します。お邪魔しました。」

私は丁寧に挨拶をしドアを閉めた。
……その間、アカネは一度も私の瞳を見ることはなく手を振っていた。








「今思えば…、あの時から兆候は見えてたのかもな。」
「ん?何か言った?」

私は小さく苦笑を漏らし2人分のホットコーヒーを準備した。
零さないように注意してベッド脇にある赤い折りたたみ式テーブルの上に置く。
それを彼は眠気眼を擦りながらゆっくりと飲み始めた。


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