私の好きな彼女、私を愛した彼氏
簡潔に言えば私が一方的にアカネを避けてるだけ。


あの日、夏休み最終日をさかえに私達の関係は確実に変わってしまった。

…いや、少し違う。

私が無理矢理に変えてしまったのだ。
ハルが切り出そうとした言葉を私は涙を使って飲み込ませた。
ハルが私の涙に弱いことを知った上で女の武器を使ったのだ。
卑怯な手段で2人の終わりを先送りにして――――――。


でも、2度目は無い。
そんな気がした。
だから……私は逃げた。

アカネの側に行かなければハルは現れないから……。




…お願い、そんな目で見ないでっ…。



私の心の奥底まで全て見透かしてしまうかのような熱く鋭い視線。
逃げ場を奪われ追い詰められた小動物のように私は小さく震えてしまった。
そして軽い眩暈を覚えその場に崩れ落ちそうになる。


「ちょっと!大丈夫?!」
「…うん。寝不足なだけ…。心配しないで。」

ギリギリの所で踏み止まり転倒は防いだものの私の体は前後に大きく揺れた。
それを見逃すわけもなく衣装係の子達が体を支えてくれる。
その横でアカネは唇を噛み締め私を見つめていた。

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