私の好きな彼女、私を愛した彼氏
その瞳は悪戯っ子のように愉しげ。
探求心の溢れるままに追求も止めない。
「彼氏いたんだぁ。知らなかったよぉ。うちの高校?学年は?クラスは?」
「ぁ…いや…。」
「何よ、教えてってば。」

左右をがっちり固められ続く質問責めに私は後ずさった。
最悪だ――。


この雰囲気だとアカネと待ち合わせって言っても通じないだろうなぁ。

「ぁ、本当に違うの。アカネと待ち合わせなんだ。」
「佐倉と?嘘だぁ。」
「こんな寒い中で浴衣着て健気に待つなんて有り得ないって。」
「彼氏に決まってんじゃん。」

予想通りの反応。
私はため息をついた。
これは適当に誤魔化すかアカネがタイミング良く現れるのを待つしかないな。

…彼氏を待ってる、って…間違ってるわけじゃ無いよね。
別に、堂々と言えばいいだけで何を躊躇してるんだ私は…。
「……じ、実は…彼氏を…。」

「アキ?」

私はハッとして言葉を飲み込んだ。
駅の改札からアカネが顔を覗かせる。

「何だぁ、本当に佐倉と待ち合わせだったんだ。」


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