ココアが欲しいんだ【季節短編】
その時、彼がなんでそんな事を言ったのか分かった。
ねぇお兄ちゃん。
バレンタインにチョコあげないって言っちゃったけど、チョコじゃないからいいでしょう?
あげるのはチョコじゃなくて、
甘い甘いアタシの気持ちが詰まった、温かいココア。
「奢り、じゃなくて私の気持ち。受け取ってくれますか?」
うつむいて渡す。
時間なんて。
名前なんて必要ない。
あるのは恋。
しちゃったものはしょうがない。
温かいそのチョコにありったけの恋を詰めて。
君に捧げる。
「もちろん」
顔を上げると笑った彼がいて、それを見て笑う私がいて。
手にはまだ、ココアの温かさが残ってた。
【完】