恋愛日和―愛してるの意味-
「何でって?――知られたら不味かった?
 私と一緒に行くんでしょ?なら、何も慌てることないじゃない。」

多分、彼の求めていた答えとは違っていただろう。
だが、私にしてみれば十分すぎる答えだ。
彼が抵抗を表すかのように、逆の手で
彼の裾を掴む私の手を振り払おうとする。
それが、さらに私の逆鱗に触れ何よっと強く叫んでしまった。
すると、それまでどちらかといえば温厚だった彼の表情に
苛立ちが見え始め、深いため息と共に
何とも身勝手な言い分を述べ始めたのだ。

「――悪いけど、今日は友達と飲む約束してるの。
 だから、お前に付き合ってる暇ないから…、
 ちょっと手、離してくれない?」
「……今日はクリスマスだよ。
 彼女の私よりも、そっちが大事なの?」
「あのなぁ、俺らもう付き合って3年目だろ?
 今更、クリスマスだのなんだの……
 高校生のガキじゃあるまいし。
 とにかくさ、また今度埋め合わせするから。」
「……。」

――体温が、一気に急降下していった。
軽い眩暈に襲われ、瞳を伏せた私の頭の中には
彼との3年間の思い出が走馬灯のように駆け巡っており…
あぁ、もう終わりだ、と漠然と感じた。
だが、それでも彼を掴む腕を離せないで居る私は……
まだ、何処かで何かを期待しているのだろうか。
もう一度、あの頃の様に笑い合えると…
私の中の彼を愛してる気持ちが
最後の足掻きをしているのだろうか…。

―――行かないで、……。

――貴方が居ないと、私…生きていけない。

喉まで出掛かった言葉。
口を開き、音に乗せようとするのに空気を掠めるだけ…。
大人の自分、女としての意地、
いらないプライド…何もかもが邪魔をし
彼を引き止めることが出来なかった。

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