恋愛日和―愛してるの意味-
『浮気をされた』『裏切られた』『私は悪くない。』

可愛くない感情だけが渦を巻き
自分の立場を彼より降格してまでも
一緒にいたいと思う…
そんな、そんな純粋で愚かな恋愛ジャンキーな私は
もう何処にも居なかったということだろう。
だから、最後の最後になるだろうに、私の口から出てくるのは
本当に可愛くない言葉ばかりだった。

「浮気…ばれないとでも思ったの?
 ……アンタ、昔から要領悪いのよっ…。
 二股なんて、アンタの器じゃ小さすぎるのっ!
 隠し通すことすら出来ないなら、―――っ、私なんか捨てて、
 さっさとその彼女のところへ行けばいいのよっ!!」


言ってしまった。その事実だけが私を動かし
半ば無我夢中で、呼び止めようとする彼の手を振り払い
咄嗟に手を伸ばしたのは
彼が大事そうに右手に抱えていた――。

「……慰謝料として、貰っておくから。―――。」



――それが、私が最後に見た彼の姿だった。
溢れそうになる涙で視界がぼやけ
笑ってたのか、怒ってたのか、呆れてたのか…
その表情が解らなかったことが
私の中でのせめてもの救いだろうか。
一目散に彼の前より走り去った私は
…途中で折れた、真っ赤なパンプスの踵を握り締め
雪雲の中をとぼとぼと裸足で家路についていた。

「……普通、彼女へ送るものでしょうが――、こーいうのは。」

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