恋愛日和―愛してるの意味-
それでも、私は引っ込みが利かなくなった手で
ゆっくりと、カードを裏返しにした。
少しだけ、癖のあるTの文字が崩されてるのを先頭に
女性の名前が筆記体で綴ってある。
それを、私は一文字一文字声に出して―――、
読み上げたのだった。

「………私…と、同じ―――、名前……ッ。」


同姓…同名、の人を好きになった…って、こと、なの?
そこに記されている名前に聞き覚えなど、嫌ってほどあり
……私は、私自身の名前を確かめる為に
免許証を取り出したくらいだ。
そう、私の名前は間違ってない。
なら、ココに書かれている名前の人物は――、私。
この指輪を送ろうとしていた、彼の伴侶は私?

「……は…っ、あははっ…、有り得ない……。
 アイツ、私と結婚するつもりだったんだ。」

浮気をしているのに…。
その言葉を呟くも止まらない涙と笑いで
途中で飲み込んでしまう。
つまり、あの人は私以外の女と浮気をしてて、
でも私と結婚するつもりだったのだ。
クリスマスに本命とのデートをキャンセルしてまで
会いたいと思ってた相手が居るくせに
律儀にその本命へ約束の婚約指輪を買って…
何、考えてるんだか…。

「――本当、失礼しちゃうっ。
 ――これじゃ、何が真実なのか…っ…わかんないよ。」


浮気をしてるのは事実。
だけど、彼が本当に愛している相手は私だったのかもしれない。
だからって――、これは裏切りには違いない。
だけど……。
悪循環な思考の中……
私は、たった一つだけ確かな想いに気がついた。
指輪を左手の薬指に填め、高く雪空にかざせば―――
少しだけサイズが小さく、
第二関節の辺りで止まっていて何とも不恰好なのがよく解る。
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