キスミー★チョコレート
「よーし!席も決まったし、授業だ!授業!」
ちょっ…あたしまだチョコ片付けてないのにぃ!
でも、熊ちゃんはそんなことお構い無し。
すでに教科書を片手に平安美人について語ってる。
チョコをそのままにしておくわけにもいかないから、
しゃがみこんで、運悪くこぼれ出たココアパウダーも拭き取りながら、
要領のよくないあたしは
もたもたとチョコを拾う。
「俺、手伝うよ」
「りっくんごめんね…ありがとう」
散らばったチョコを、隣でりっくんも黙々と集める。
こうやって授業中に二人だけでしゃがんでいると、
まるであたし達だけの世界になったみたい。
そんなことを考えながら隣のりっくんに目をやった。
当のりっくんはなにやら口をもぐもぐさせている。
ちっちゃい子みたいに口元にココアパウダーをつけて。
手には開封済みのラッピング包み。