キスミー★チョコレート
その香りが鼻腔をかすめる刹那、
あの夏の情景が走馬灯のように駆け巡り、
懸命に抑えていた、
“アレ”
をいつもより生々しく思い出してしまった。
こうなったら、本当にダメなんだ。
だからチョコは苦手なの。
だから…
「…あやかちゃん」
考えがまとまったのか、りっくんを見つめるあたしを、さらに見つめ返してきた。
口の端についたココアパウダーを、ハンカチでとってあげようとした手を掴まれる。
「…あやかちゃん覚えてる?」
りっくんがまるでチョコレートみたいに甘く
耳元で囁いた。
「“あの時のアレ”あやかちゃん…覚えてる?」