【童話シリーズ第1弾】ふしぎの国のアリス
その時です。
「大変だ~大変だ~大変だ~」
何ともとぼけたような声を出しながら、一匹のうさぎが目の前を通ったのです。
「ああん?」
アリスはもう1度、目を凝らして見てみました。
丸々と太った体に、スーツを着たうさぎ。
「・・・あんなふざけた奴見たことねえよ。うさぎのくせにスーツなんか着やがって。紳士気取りかっつうの」
アリスはつぶやきました。
その間にも、太ったうさぎはどんどん離れていきます。
「・・・おもしろそうだから追っかけてやらぁ!」
アリスはニヤリと笑って立ち上がり、スカートをまくって走り出しました。
「アリスー!?もう、そんなはしたないことしないのー!」
遠くでお姉さんが叫んでいましたが、そんなのアリスの耳に入ってきません。
今のアリスの関心は前方のうさぎに注がれていました。
その目はまるで、獲物を狩る獣のようです。