ロシアンルーレット【コミカルアクション】
遊びからかして夜を明かした俺の所へも、『翌日』という名の日常は平等に訪れる。
俺は猛烈な眠気と、けだるさとに全身を侵されながら、古い二階建てアパート二階の一室を、アパートが面している通りに立ち見上げていた。
俺がいつも行動を共にしている、先輩の蔦山さんが入り口で銃を構え、中の様子を窺っている。
そして、蔦山さんは振り返って俺に視線を寄越し、裏へ回れと顎で合図した。
俺は命じられたとおり裏へ回り、対象の部屋の窓を見上げた。
突然、その部屋から忙しく人が動く物音が響き、窓がガガガと立て付けの悪そうな大きな摩擦音を立て、勢いよく開けられた。
チンピラ風のガラの悪い男が姿を現し、窓枠に片足を掛けた。
次の瞬間、男はためらうことなく窓枠を蹴り、自分の身体を窓の外へと放った。
高く昇った陽の光を背中に浴びて、黒い陰となって宙を舞いながら、男は俺と視線がぶつかると、大きく目を見開いた。
そして、地に足着くなり男の右拳が、俺の顔面目掛けて繰り出される。
俺は上体を捻ってそれを避けつつその腕をつかみ、勢いを利用して男の腕を大きく下方に弧を描くように回すと、男の身体は空中で前転して背から地に叩きつけられた。
右手は男の手首を掴んだまま、左手で上着のポケットを探って手錠を出し、それをその手首にはめ、さらに男を乱暴に転がしてうつ伏せにすると、後ろ手に両手を拘束する。
その隙に二人目の脱走者が地に降り立ち、俺に背を向け全速力で遠ざかる。
俺はすぐさまそいつを追った。