ロシアンルーレット【コミカルアクション】
 その様子を少し離れた位置から呆然と眺めている俺に向かって、カウンターの中から『座れよ』とでも言うように兄貴が自分の目の前の席を右手で指した。


 すぐにでも帰りたかったが、なんとなくそれもできず、俺はしぶしぶ兄貴が指した席に腰掛けた。


「飲むか?皆人。」


 目の前の兄貴がそう言って微笑んだ。


 その微笑はまるで、蔦山さんがダメな俺がたまに成し遂げる功績を讃える時のそれに似ていて、俺は思わず見惚れてしまった。


 と同時に、さゆりを殺れなかったという事実を、益々言い出しにくくなった。


 『何て言い訳すっかな…』


 そんな苦難が俺の頭の中をぐるぐる駆け巡った。


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