ロシアンルーレット【コミカルアクション】
 気付くと俺、右手でノアの頬を包み、親指で零れ落ちる涙をぬぐっていた。


 それから、ゆっくり顔を近づけた。


 ノアもそれに合わせるように、ゆっくり瞼を落とした。


 ノアにキスしたかった。


 でも俺の唇がノアのに触れる直前で、やっぱり俺は思い留まり、唇は離して代わりに額をノアの額にそっとくっ付け目を伏せた。


 予想を裏切った俺の行為に、ノアがパッと眼を見開いた。


 額と額で繋がったまま、


「ダメだ、ノア…ダメなんだ。」


 俺はやっとのことで声を絞り出して呟いた後、素早くノアから離れ、部屋を飛び出した。


 振り返らず、限界まで走り続けた。




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