ロシアンルーレット【コミカルアクション】
 入り口に立つ俺の横を掠めるようにして、俺に一瞥をくれながら皆出て行くが、そのどの顔にも見覚えがあり、全員警察関係者だと悟った。


 女と俺、そして蔦山さんと兄貴の四人が部屋に残された。


「久しぶりだなぁ、蔦山。」


 兄貴が薄く微笑んで、蔦山さんにゆっくり近付きながら声を掛けた。


 蔦山さんは大股を開いて座り、兄貴を睨みつけている。


 後ろ手に拘束されて、その逞しい二本の腕は実に窮屈そうだ。


 二人は知り合いか?


 蔦山さんは押し黙ったまま、兄貴に鋭い眼光を投げるばかり。


 兄貴はそんな蔦山さんを、まるで捕らわれて身動きの出来ない猛獣を見るかのように、冷ややかに嘲笑すると、続けた。


「お袋が死んだ日以来か?」


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