ロシアンルーレット【コミカルアクション】
 男は箱ごとタバコを差し出し、俺が一本抜き取ってくわえると、100円ライターでそれに火を点けてくれた。


 兄貴の仲間は皆イイヤツだ、多分…


 やっぱり蔦山さんが悪人だ。


 俺はそう、自分に言い聞かせようとしたが、蔦山さんと兄貴のいる部屋から容赦なく聞こえてくる悲痛な叫び声に、耳を塞ぎたくなった。


 がむしゃらに煙を吸い込むも、この苦痛は誤魔化しきれなかった。


「蔦山さんが吐くとは思えない。」


 沈黙に耐え切れず、俺は独り言のように呟いた。


 タバコをくれた男が、そんな俺に苦笑し、


「龍の拷問を受けて吐かなかったヤツなんか、未だかつて一人もいない。」


 どこか悲しげにそう言った。


 自分達のやってることが正しいと信じてはいるが、また一方では不条理さも感じている、そんな葛藤があるかのように見える。


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