ロシアンルーレット【コミカルアクション】
 涙が次から次へと溢れ出し、視界がぼやけたが、それでも俺は蔦山さんの姿を捉えようと必死になっている。


「撃て…ありさか…」


 全てを諦めたように…そして、全てを悔やむように、蔦山さんは目を閉じた。


 どれほどの間、俺はそうしていたのだろう。


「頼む…有坂…楽にしてくれ。」


 最後の力を振り絞るように蔦山さんが言い、俺は我に返った。


 構えていた銃を下ろすと、さらに蔦山さんに近づき、片膝を付いて目の高さを合わせた。


「今は救急車は呼べない。でもなんとか生き延びてください。そして罪を償うんだ。でないと、まどかさんが報われない。」


 蔦山さんの右頬を一筋、涙が伝った。


 死んで何もかも終わらせようなんて、虫が良すぎる。


 蔦山さんは一生かけても罪を償うべきだ。


 俺は、蔦山さんを残して部屋を出た。







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