ロシアンルーレット【コミカルアクション】


 俺はそのまま、ノアのいる隣の部屋へ行き、扉をそっと開けた。


 ノックしたってどうせ聞こえないしね。


 壁を向いてベッドの上に横向きに身体を横たえ、ノアは小さな寝息を立てていた。


 足音を忍ばせてベッドに近付き、ベッド端に腰を落とし、振り返るように身体を捻ってノアを見下ろす。


 ノアには蔦山さんの“アレ”は聞こえていない。


 こんな時、耳が不自由であることが実に都合がいいと、不謹慎だが本気で思った。


 あんな生々しい断末魔の叫びを耳にしたら、こんな風に幸せそうにすやすや眠るなんて、まともな人間なら絶対に不可能だ。


 ノアの寝顔は、まるで天使のようで、なんだか別世界のもののように感じた。


 こんなにすぐ傍にあるのに、手を伸ばしても届かないんじゃないだろうか?


 それを確かめたくて、手を伸ばす。


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