ロシアンルーレット【コミカルアクション】
 兄は、とても優しかった。


 ほんとに完璧な兄だった。


「兄さんはいいな…。何でもできて。カッコいいし、性格もいい。女にもモテるし。」


 いつだったか、俺は兄にそう言ったことがある。


 女に振られて凹んでた時だった。


 丁度今日みたいに…。


 兄に『失恋』なんて言葉は無縁だと信じて疑わなかった。


 でも兄は、俺の言葉がまるで全く的を得てないかのように、フッと可笑しそうに微笑むと、


「俺はお前が羨ましいよ。俺が籠の中のインコだとしたら、皆人は大空を自由に羽ばたく鷹だ。」


 と俺を優しく見詰めて言った。


 俺が羨ましい??


 兄さんが『インコ』で俺が『鷹』??


 さっぱり意味がわからなかった。





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