ロシアンルーレット【コミカルアクション】
 それでも理沙はショックを隠し切れずに、呆然と立ち尽くした。


「お前には、俺がいるじゃねーか。」


 谷口が理沙を抱きしめようと両手を広げて近付く。


 理沙はその瞬間、弾かれたように我に返ると、咄嗟に谷口の顔面を目一杯広げた片手でガシと掴むと、少しでも遠くへやらんと全力で後方へ押しやった。


「妻子持ちなんかに用はないのよ。」


 理沙は目を細め、冷ややかに言い放つ。


「あれ、俺の子じゃない…」


 理沙に顔面を押さえつけられたまま、谷口が力なく反論した。


「あんな、あんたに生き写しの子生ませといて、何ほざいてんだか。」


 ようやく谷口の顔を開放し、理沙はさらに続けた。


「あんたんとこの翔馬(ショウマ)、この前、ここの駐車場で泥水入った鉄砲、乱射してたわよ。」


 谷口は、自分が弁当を忘れて、妻の多恵が届けに来た時だと、苦々しく記憶を辿った。


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