ロシアンルーレット【コミカルアクション】
 ノアは俺の二の腕辺りの上着をつまみ、2度軽く引っ張ってもう一方の手でマンションの方を指差した。


 俺に寄って行けっていうのか?!


 そんなの無理だ…いや、駄目だろ?!


 咄嗟に俺は両手の平をノアに見せるように前方へかざし、


「いや、いいよ。」


 と断った。


 聞こえないってわかってて言葉を発したのは、ジェスチャーに自信がなかったから。


 ノアに俺の気持ちがちゃんと伝わったか確信はないが、ノアが哀しそうな表情をした。


「さよならを…言いに来たんだ。俺のせいでお前が危険なめに合うのは耐えられない。」


 俺を見詰めるノアの瞳がゆらゆらと微かに揺れ、ドサッという音がしてノアの肩からエコバックが落ちた。


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