現実RPG2
「死ぬなよ、拓馬」


「お前こそな」


そのときだった。前方から、すさまじい気配がする。


「あそこだ」


ルイは、屋敷のような家を指差した。


あの中に、マーダーが居る。


ルイ自身、マーダーの屋敷を目の前にするのは初めてだった。


一体、中に何体モンスターがいるのか……。


「どうするんだ?正面から行くのか?」


拓馬が聞く。


正面入り口の門は、開いていた。


入り口から、中の様子が見える。


見たところ、モンスターはいない。


怪しいな……門も開いてるし、罠か……?


「とりあえず、行こうか」


と、先陣を切って歩き出すルイ。


相手は、マーダーだ。


何をしてくるかわからない。


正面入り口をわざと開け、罠みたいに見せかけ、実は裏口に罠を仕掛けている可能性もある。


かと言って、この入り口が罠の可能性もある。


考えるだけ無駄だ。可能性など、考えるだけ時間の無駄。


今、この入り口には敵がいない。


それなら、少なくともちょっとは進める。


「静かだな……」


ルイの後ろに続く拓馬がボソッと呟く。


確かに、静かだ。まるでモンスターの気配がしない。


無人ではないかと思わせるほどだった。


「なぁ、ホントにいるのかよ?」


「おい、あんまり喋るな。気づかれるぞ」


しかし、ルイ自身もそんな気がしていた。


本当に居るのか……?まるで、モンスターの気配がない。


しかし……入り口の前、確かにすさまじい気配はした。


居る。


どこかに、必ずマーダーは居る。
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