現実RPG2
「逃げようなどとは思わないことだ」


気味の悪い声で呟くガクラ。


どっちが速いかなんて言う次元じゃない……


「何だよ……何だ、こいつ!」


全身痙攣状態の拓馬。


間違いなく、殺される。


今までのモンスターと、格が違う。そんな気がする。


「では、さっそくだが。お手並み拝見といこうか」


ガクラはそう言うと、片手を拓馬に広げた。


「ブラックホール」


その言葉と同時に、ガクラの手から黒い弾が飛んでくる。


弾は、拓馬の左腕にヒットした。


「ぐっ……!」


痛みに耐えようと、歯をくいしばる拓馬。


しかし、痛みがなかった。


確かに当たった気はしたが、当たった感触すらなかった。


ハズレたのか……?


「あ……」


自分の左腕を見て、絶望した。


左腕が、無い。


血は出ていないが、まるで初めから無かったように、肩から下が無くなっている。


「うわぁああああ!」


俺の手が!俺の手が!


枯れた声で叫び、左肩を右手で押さえる拓馬。


「何だ、かかって来い」


手招きをして挑発するガクラに、拓馬は恐怖しかなかった。


「ぁあぁあああ!」


手が無くなった。手が、無くなった。


拓馬の頭の中には、それしかなかった。
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