Dangereuses hospital
薬品の瓶を開け、薬品保管室で同時に入手しておいたガーゼに薬品を染み込ませる。

そして犯人が背を向けた隙を狙って背後から忍び寄り。

「!!!?」

素早く口と鼻をガーゼで塞ぐ。

…よくドラマや映画で見かける光景だろう。

俺が入手したのはクロロホルム。

19世紀後半から20世紀前半にかけて、一般的な吸入麻酔薬として外科手術の際に利用されてきた。

麻酔作用がある事は有名で、吸わせれば相手が気を失うと思われがちである。

しかし、クロロホルム自体は実際には多少吸引しても気を失う事はまずなく、せいぜい咳や吐き気、あるいは頭痛に襲われる程度である。

事実、犯人は酷く咳き込みながらその場に蹲る。

だが、それだけで十分だ。

ここで必要なのは、騒がれる事なく、周囲に知られる事なく犯人を無力化する事なのだ。



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