Dangereuses hospital
垂れてくる鼻血を手で拭いながら、体を起こす。

初めて見る、テロリストとしての八戸の顔。

あんな小柄な女の身で、まるでプロ並の格闘技の腕前だ。

俺だって外事四課に配属されるにあたって、格闘術の訓練はウンザリするほど受けてきたというのに、まるで相手にならない。

素手で八戸に立ち向かうのは、不可能といっても良かった。

…このままでは、ここで彼女に撲殺されるのも時間の問題。

俺は。

「!」

臆面もなく八戸に背中を向けて走り始めた。

見ての通りの逃走だ。

俺の任務は第一に人質救出。

ここでやられる訳にはいかなかった。

「……」

勿論、八戸だってそのまま逃走を許す筈がない。

感情を表に出さない、精密機械の如き動きで、俺を追跡してくる!

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