Dangereuses hospital
握り締めた朝霧の手。

それをゆっくりと放す。

「……」

感情を失った朝霧の表情。

しかしその瞳だけは、俺に不安を訴えかけた。

当然だろう。

武装グループが徘徊している病院内で一人にされる事の恐怖は、誰よりも俺がわかっている。

だからこそ。

「朝霧」

無理矢理にでも笑みを浮かべ、朝霧を見つめる。

こんな状況下、笑顔を見せてやるだけでも、どれ程の安心感を相手に与えてやれる事か。

アミューズメントタワーで極限の体験をしてきた俺は、その事を知っていた。

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